1994年から『週間少年サンデー』で名探偵コナンの連載が始まってから、テレビアニメ放映や劇場版映画も始まりその勢いはとどまることを知りません。例年最新作が話題になり人気を博していますが、その中でもコナンファン一押しの作品である『ベイカー街の亡霊』についてご紹介します!
【あらすじ】
コナンたち少年探偵団は小五郎たちとバーチャル体感型の新型ゲーム機「コクーン」の完成披露パーティーに訪れる。コナンたちはコクーンに乗り込みゲーム開始を待つが、会場では殺人事件が発生し、コクーンは人工頭脳「ノアズ・アーク」に乗っ取られ、参加者50人が人質となってしまう・・・。現実世界で起こった事件を解決するため、コナンたちは100年前のロンドンに行き「切り裂きジャック」を追う!
【感想】
なんといってもストーリー展開から設定まで、全てがおもしろい!コナンファンでなくても、引き込まれる内容になっています。新型ゲームを体験しているという設定なので、見ている自分もゲームに参加しているかのような気持ちになり、最後までドキドキ、ハラハラが止まりません!
コナンたちが参加したステージは、「オールド・タイム・ロンドン」。100年前のロンドンに行き「切り裂きジャック」と呼ばれた連続殺人犯を捕まえるというミッションのステージでした。100年前のロンドンと言えば、シャーロックホームズ。コナンファンからすると、ホームズオタクの工藤新一(江戸川コナン)とシャーロックホームズがこの映画で共演を果たすということだけで、感動的なんです!
ゲームをクリアするために少年探偵団とほかの子供たちが助け合っていく姿にも心動かされます。少年探偵団と今回登場する子供たちの出会いは最悪で、序盤では私もこの子供たちのことはあまり好きではありませんでした(笑)とにかく最初は性格が悪いんです。しかし、このゲームを通してお互いを思い合っていく成長っぷりは映画を見終えても余韻が残るぐらい温かいんです。少年探偵団をかばって、自分がケガをし、ゲームから離脱していく姿は何回見ても涙が出ます。
クライマックスの切り裂きジャックとコナンの対決シーンでは、画面から目が離せないぐらいハラハラしました。その後のコナンの謎解きシーンでは、過去・現在の事件の謎が全て繋がります。最後に全てが繋がるというストーリー展開でミステリーとしてのおもしろさも充分に感じられます。「これぞ名探偵コナンだ!」と何回見ても思ってしまう映画なんです!
バーチャルな世界観で子供心を掴み、シャーロックホームズとの共演でファンの心を掴み、温かい友情と愛情物語で大人の心も掴むこの映画は、皆さんに紹介せずにはいられない名作です!僕のコナン映画ランキングでは、いつでもダントツトップです!
【考察】
この映画は、親子愛がテーマになっていると思います。普段は蘭と新一など、ラブが中心となった愛が描かれていることが多いのですが、『ベイカー街の亡霊』は、親子の絆が深く描かれています。
というのも、物語はこのゲームを支配する人工頭脳「ノアズ・アーク」を作った少年の死から始まるのですが、この原因は養父であるシンドラー社長との関係やその環境です。養父に利用され閉鎖された環境を苦に命を絶ったノアズ・アーク発明者のヒロキくん、親に捨てられたことをきっかけに凶悪連続殺人犯となった切り裂きジャック、親の権力にあぐらをかき傲慢な性格の有力者の息子たち・・・。
このような大人に支配された子供たちを描いています。そして物語を進めていくにつれ、それぞれが歪んだ親子関係から自立し、自分の意志を持ち成長していく。そして最後に、ゲームを終えたコナンと現実世界で事件解決を手伝っていた父・工藤優作との絆が垣間見える瞬間があります。
この2人が最後に目を合わせるシーンは、父、息子としてお互いを尊敬しあい、今まで描かれてきた親子関係の理想的な終着点ともいえるシーンだと考えさせられました。
様々な形の親子関係が描かれていますが、歪んだ愛でも親子は深い絆で結ばれているという深いメッセージが込められているのではないかとつい考えてしまう内容です。
【重要なキャラクター】
*ヒロキ・サワダ
「コクーン」に侵入した人工頭脳「ノアズ・アーク」を発明した少年。母親がなくなった後、IT会社社長トマス・シンドラーの養子となったが、ノアズ・アークなどの発明をして天才少年として有名になったため、厳しい監視下におかれるようになる。その環境に耐えられず、人工頭脳「ノアズ・アーク」を一般回線に流し、10歳で自ら命を絶った。
*ノアズ・アーク
ヒロキが発明した人工頭脳。日々成長していく人工頭脳で、バーチャル体感型新型ゲーム機の「コクーン」に侵入。子供たちの勇気ある冒険を目の当たりにし、最後は自ら身を引く。
【豆知識】
バーチャルリアリティー
今回の映画の世界観として使われている「バーチャルリアリティー」。一般的にVRともいわれています。
バーチャルな空間であたかも生身の自分が体験しているような感覚に陥るもので、最近はVRを使ったジェットコースターなどもありますよね。映画のコナンたちも脳にバンドを巻かれ、刺激されることでゲームの中に入り込んでいきます。でもそれは、あくまで自分のアバターであって生身の自分が戦ったりしているわけではありません。
だから何かで殴られたとしても物理的には死なずに、現実世界へと戻ってこれるんです。今回はその現実世界が人工頭脳に乗っ取られたため、本物の命を人質に取られているという設定ですが、自分の身に起きたらと考えるとゾッとしますね・・・(笑)