劇場版名探偵コナン 瞳の中の暗殺者~愛は奇跡を起こす~

子どもの頃、この映画を観て「記憶喪失」という障害を知った人も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、『劇場版名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』です。

劇場版ならではの派手なアクションと名シーンがたくさんあって、人気の高い作品です!

あらすじ

警察官を狙った連続殺人事件が発生。事件を目撃したコナンと少年探偵団だったが、見知った警察関係者たちは口を閉ざすばかり。そんな中、パーティにて佐藤刑事が銃撃される。現場にいた蘭はショックで記憶喪失になってしまい、さらには犯人に命を狙われることに。コナンは蘭を守るため、捜査に乗り出すのだった。

感想

コナン映画の中でもとても完成度の高い作品です!

馴染みある警察関係者から感じる不穏な空気から始まり、姉御肌で頼りがいのある佐藤刑事が銃撃される展開。さらに最強のヒロインでもある蘭が記憶喪失になってしまい、いつもの気さくで明るい雰囲気がまったくなくなってしまいます。

これはなにやら大ごとだぞ……と序盤から緊張感のある展開が続きます。

私が記憶喪失という障害を知ったのもこの映画がきっかけでした。

両親のことも自分の名前も忘れてしまう恐ろしい障害です。ずっと両親と共に暮らすことを望んでいる蘭ですが、これをきっかけに一時的に英理との同居が叶うのは皮肉なことだと思いました。

園子が蘭を親身に心配しているところも印象的です。記憶が戻らなくても友だちだ、と涙ながらに言い切る姿は、彼女たちが無二の親友であることをありありと感じさせます。

コナンは蘭が実際に命を狙われたことで本格的に捜査に乗り出しますが、コナンが謎を追う間、蘭の記憶を取り戻そうとする一同と別行動になってしまうことが、その後の展開に生きてきます。

本作の魅力の一つとして、少年探偵団が生き生きと活躍している部分も大きな部分です。小学生でありながら蘭を守るために行動し、小学生だからこそ守るべき蘭に守られてしまう。なんとももどかしい展開にハラハラが止まりません!

豪快なアクション(これがまた面白い!)のあとは、コナンと蘭が合流し、犯人からの逃走劇が始まります。二人の甘い展開が続き、いつ記憶が戻るのかとこちらもドキドキしてしまいます。

噴水広場でのシーンは本当に素晴らしい!

いよいよ蘭が記憶を取り戻しますが、犯行場面を思い起こさせる噴水の吹き出し方はまったく予想出来ませんでした。新一とのデートがきっかけになったのも、二人の絆を感じさせます。

最後に蘭ねーちゃんが空手で犯人を倒すのも、コナン作品らしくてほっとする展開でした。

考察

・真犯人について

だいたいのコナン映画では怪しい人物というのがすぐに出てくるのですが、この作品ではコナンの謎解きまで犯人がはっきりしないところが最大の魅力だと思っています。

なぜ犯人がわからないのか。それは序盤に説明される前提が全て警察視点の意見であり、真実ではないからです。

視聴者はコナン側の視点で物語を追いますが、当然犯人側の視点を見ることは出来ません。そのため、事件の前提条件が真実と異なるだけで大きなミスリードが引き起こされるのです。

また、物語の始まりである「警察官を狙った連続殺人事件」という事件がまったく違う意味も持っていた、というのも真犯人を簡単に見破れないようにする罠だったように思います。

・コナンと蘭の関係

推理漫画として始まった作品ですが、本作では新一(コナン)と蘭の恋愛エピソードが一つの肝になっています。推理ショーを期待して観るとがっかり……ということは絶対にありませんが、それでも他のコナン映画に比べて二人の関係が濃密に描かれていることは間違いありません。

それでもこれだけの人気を博している背景には、やはり事件と恋愛エピソードがうまく絡み合っていること、狙われた好きな人を助けたいというコナンの強い気持ちに視聴者が共感したことがあげられると思います。

また、この映画はアニメ第一話との繋がりがあることから、物語に入りやすいという理由もあったと思います。

いずれにせよ、二人の関係性がよくわかる作品でした。

新しい登場人物

仁野 環

 ルポライター。事件の発端となった被害者の妹。

友成 真

 フリーター。父が亡くなったことを警察の責任だと思い込んで恨んでいる。

小田切 敏也

 ロック歌手。警察幹部の父を持つが、折り合いが悪い。事件の発端となった被害者との口論が目撃されている。

風戸 京介

 米花薬師野病院の医師。白鳥警部を始め、多くの警察官と縁のある心療内科医。蘭の診察を担当した。

仁野 保

 被害者。事件の発端となった人物。環の兄。

用語解説

逆向性健忘

蘭が陥った記憶障害で、一般的に記憶喪失とも呼ばれるもの。ある地点から過去の記憶を思い出せなくなる症状です。映画やドラマでもよく見かける題材でもあります。

発症後は次第に記憶が戻ってくることが多いようですが、今回蘭が狙われたのは記憶が戻ってくるからこそ、という点が大きいですね。

それしても記憶を失ってからの蘭の変わりようはすさまじいもので、自分自身がわからなくなるという恐怖がひしひしと伝わってきました。

さらに彼女は命まで狙われていたのですから、家族や友だち、大切な人からの支えがどれだけ大きなものか、周りに感謝して毎日を過ごしたいものです。

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